糖質は、現代ではダイエットや健康の敵のような見方をされることがありますが、実際にはエネルギー源として決して欠かすことのできない栄養素です。

また、DNAやRNAなど核酸やホルモンをつくる糖タンパク質の材料として、身体の構成成分としても欠かせません。

その糖質について、働きや炭水化物との違い、欠乏や過剰の症状、多く含む食品などについてまとめてみました。

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炭水化物と糖質の違い

炭水化物は炭素(C)と水素(H)と酸素(O)からなる有機化合物です。

化学式でCmH2nOnと表されるものが多く、これをCm(H2O)nと表すと炭素(C)と水(H2O)が結びついたものに見えるため、炭水化物と呼ばれるようになりました。

栄養学では、炭水化物は糖質食物繊維に分けられます。

糖質はさらに単糖類、少糖類、多糖類に分類され、食物繊維は水溶性食物繊維不溶性食物繊維に分類されます。

水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の特徴、働きの違い

単糖類にはブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、ガラクトースなどがあります。下はブドウ糖と果糖の化学式です。省略していますが、O以外の多角形の頂点部分に炭素(C)があります。

少糖類や多糖類は、単糖が少数、または多数結合したものをいい、単糖が2つ、3つ…結合したものを二糖類、三糖類…と呼びます。

ショ糖(砂糖、スクロース)麦芽糖(マルトース)乳糖(ラクトース)などは二糖類です。

例えば、下図のように、ショ糖はブドウ糖と果糖が1分子ずつ結合したものになります。

また、デンプンはブドウ糖が数百~数千個結合したものです。

糖質の働き

糖質の働きとして、大きく2つあります。

・エネルギー源になる
・身体の構成成分になる

エネルギー源として

糖質は体内で酸素と二酸化炭素に分解され、1gあたり4kcalのエネルギーを生み出します。

日本人の食生活においては、1日に摂取する総エネルギー(カロリー)のうち約6割を糖質が占めており、生命活動に欠かせない栄養素です。

特に、グルコース(ブドウ糖)は脳の通常時の唯一のエネルギー源であり、決して欠かすことのできない栄養素です。

また、余った分はグリコーゲンという成分に変換され、貯蔵エネルギーとして肝臓や全身の筋肉に蓄えられます。

身体の構成成分として

消化・吸収された糖質は、体内でリボースデオキシリボースなどの糖に変換され、DNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)などの核酸の成分になったり、黄体形成ホルモン、甲状腺刺激ホルモンなどのホルモンをつくる糖タンパク質の成分として身体の組織を構成します。

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糖質の欠乏症

糖質が不足すると、エネルギー不足に陥ります。脳や神経にもエネルギーが補給されず、意識を失う場合もあります。

また、糖質が不足している場合は、脂肪たんぱく質が代わりにエネルギー源として消費されることになります。

ブドウ糖が枯渇した状態で脂肪をエネルギー源にした場合、肝臓でケトン体という酸性物質が作られるようになります。ケトン体はブドウ糖の枯渇時に、代わりに脳のエネルギーとなるものです。

脂肪の代謝が進むと、ケトン体の血中濃度が上がり、血液が酸性に傾くアシドーシス(酸血症)を引き起こします。

糖尿病などでインスリン作用が不足している場合などは特に深刻で、糖尿病性ケトアシドーシスと呼ばれ、意識障害をきたし、最悪の場合は死に至ります。

また、たんぱく質がエネルギー源になった場合は、筋肉をつくり、維持する体たんぱく質が不足することになり、筋肉量が減少します。

糖質の過剰症

糖質を摂取すると、エネルギーとして使われ、余った分はグリコーゲンとして肝臓や筋肉、血液(血糖)などに蓄えられますが、それでも余った分は脂肪として貯蔵されます。

脂肪は貯蔵エネルギーとして重要なものですが、増えすぎると肥満になり、高脂血症や糖尿病など生活習慣病の引き金となります。

糖質を多く含む食品

糖質は穀類やイモ類、豆類や果物類や野菜類など、様々な食品に豊富に含まれています。特にご飯やパン、麺類など主食から最も多く摂取され、主要なエネルギー源となります。

糖質を多く含む食品の、可食部100gあたりの含有量(g)は以下のとおりです。

可食部100gあたり(g)
食品 糖質
含有量(g)
スパゲッティ(乾) 71.2
うどん(乾) 69.5
精白米 77.1
食パン 44.4
コーンフレーク 81.2
緑豆はるさめ 83.4
ゆで小豆缶詰 45.8
さつまいも 29.7
じゃがいも 16.3
西洋かぼちゃ 17.1
とうもろこし 13.8
バナナ 21.4
りんご 14.3
甘柿 14.3
ぶどう 15.2

糖質の上手な摂り方

糖質の代謝にはビタミンB1をはじめとするビタミンB群が欠かせません。糖質をいくら摂ってもビタミンB1が不足すると代謝が行われず、脚気などの欠乏症を引き起こします。

ビタミンB群は、玄米や全粒粉など、精白されていない穀類の外皮や胚芽の部分に豊富に含まれます。ですので、白米に玄米や胚芽米を混ぜたり、全粒粉のパンにすると効率よくエネルギー補給ができます。

ただし、糖質の過剰摂取は肥満につながりますので、自分の身体活動レベルに応じた摂取を心がけることが大事です。

アルコールはエンプティカロリー?

なお、アルコールも炭水化物の一種で、1gあたり約7kcalのエネルギーがあると言われています。代謝の過程で熱に変わるため、ほとんどエネルギーとして残らず、したがってたくさん摂取しても肥満にはつながらない、という説があります(エンプティカロリー)。

しかし、実際にはアルコールがどれほどエネルギーとして代謝されるのかは、個人差等もありはっきりしたことは分かりません。

いずれにせよ、アルコール(お酒)を飲むことは、たいていの場合、高カロリーのものを長時間食べ続けることにつながり、結果として肥満を招きやすいことは確かです。

肝臓への負担や、生活習慣病のリスク等を考え、適量を守ることが大事です。

まとめ

炭水化物は糖質と食物繊維に分けられる。

食物繊維は水溶性と不溶性、糖質は単糖類、少糖類、多糖類に分けられる。

糖質はエネルギー源として使われたり、グリコーゲンとして貯蔵エネルギーになったり、DNAやRNAなど核酸やホルモンをつくる糖タンパク質の材料になる。

特にブドウ糖は通常時の脳の唯一のエネルギー源である。

糖質が不足すると身体と脳のエネルギーが不足する。ブドウ糖枯渇時には脂肪やたんぱく質が代わりに使われるが、この場合血中に酸性のケトン体が増えるアシドーシス(酸血症)を引き起こしたり、筋肉量の減少を引き起こす。

余った糖質は脂肪に変えられて蓄えられる。そのため糖質の過剰摂取は肥満につながる。

糖質は穀物やイモ類、果物類などに多く含まれる。糖質の代謝にはビタミンB1をはじめビタミンB群が必要なので、これを多く含む玄米や胚芽米、全粒粉を意識して取り入れるとよい。

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