今回の奈良旅行の一日目、最初に訪れたのは新薬師寺でした。新薬師寺に訪れるのはこれが3回目です。

目的は国宝の十二神将です。他の寺院では見かけない、独特の魅力をたたえた仏像です。

一回見たらもういいや、というのではなく、いつまでも記憶に残り、機会があればリピートしたくなる、そんな仏様たちです。

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新薬師寺の十二神将に会う

新薬師寺の基本情報

華厳宗 日輪山 新薬師寺
住所:〒630-8301 奈良県奈良市高畑町 高畑町1352
電話:0742-22-3736
FAX:0742-26-1517

新薬師寺の十二神将

春日大社の南に新薬師寺という古い寺があります。天平十七年(747年)に、聖武天皇の病気の回復を願って、光明皇后によって創建されたと伝わっています。

その本堂は国宝に指定されており、そこに安置されているご本尊の国宝薬師如来坐像と、それを取り巻く国宝の十二神将像が非常に有名です。

この十二神将は、塑像といって、木の骨組みに粘土を盛り付けて、それを彫って形を作るという方法で作られています。

東大寺法華堂(三月堂)の日光・月光菩薩像や、東大寺戒壇院の四天王像なども塑像ですね。

塑像は古い仏像の作り方で、新薬師寺や東大寺のような、創建の古いお寺に少し残っている程度で、後世のお寺には脱活乾漆造や寄木造などの仏像が多いです。

見た目は色褪せて白っぽくなっていて、白い泥人形といった感じで、後世の寄木造や一木造、脱活乾漆造などに比べても、より素朴でアルカイックな雰囲気をかもし出しています。

新薬師寺を訪れるのはこれが三度目ですが、やはりいつ見てもここの十二神将はいいですね。

新薬師寺の本堂で仏様たちに再会

暗い本堂に入り、ご本尊の薬師如来坐像の方から反時計回りに進みます。ここの薬師如来は、目を大きく見開いていて、黒目がちなのが特徴的です。非常に目力があります。

榧(かや)の木から造られ、頭と胴体は一木なのだそうです。榧の木は堅くて彫刻に向かない材質ですが、シナモンに似たよい香りがするので使われることがあるそうです。

それにしても、そんな難しい材で、こんな大きく優れた仏像を彫れたのは驚きです。聖武天皇の病気平癒のために、光明皇后が創建したという格式の高いお寺だからこそでしょうね。

ビデオを観る

前回訪れた時に観た、仏像好きの「はな」さんというモデルの方がナレーションをしている、伐折羅(バザラ)大将の色彩を復元するプロジェクトを追ったドキュメンタリー映像があったのですが、なくなっていました。

残念に思っていたら庫裡(くり:寺の台所、住職の住居)の方に移動していました。

6畳間にモニターが置かれてあって、座ってゆっくり鑑賞できるようになっており、さらに首を振るタイプの電気ストーブも置かれてありました。

観光客にとっては、暗い本堂で立って観るよりも、こちらの方がいいです。ありがたいですね。ちなみにこのDVDはタイトルを『まぼろしの色彩を追って~奈良新薬師寺 天平のバザラに会いたい~』といいます。

ドキュメンタリーでは、大学の研究者や修復の専門家たちが、像に残されたわずかな彩色から、見事に千数百年前の極彩色の姿を再現していく様子が克明に描かれていました。

そうやって復元された、どぎついまでに派手な仏像たちの姿が映し出されたとき、私は「うわぁ」と思いました。

私のこの「うわぁ」には、単に感嘆しているだけではない、名状しがたい思いが込められていました。そのきらびやかさに感銘を受けたのはもちろんですが、同時に、

「こんなに豪華な彩色も、時間が経てば失われてしまうんだな」
「むしろ色褪せた今の方がいいよな」

そういう思いも錯綜していました。

映像では、悲しげなBGMとともに次第にその仏像たちが色褪せていく演出があります。

そして、極彩色の仏像たちは、千数百年の年月にさらされ、真っ白になり、すすけてしまった現在の姿に戻ります。

浦島太郎だかシンデレラだか、そんなおとぎ話を見ているような気分になりました。

BGMの使い方が秀逸で、何とも言えない物悲しい気持ちになりましたが、同時に「今の色褪せた十二神将が一番いいよね」とも思いました。

仏像を拝むとき、人は単なる木や泥や銅のかたまりを見ているわけではないのですね。

映像はさらに続きます。色褪せた現在の十二神将像の姿を一尊一尊(仏像は一体ではなく、一尊と数える)追っていきます。

それぞれがユーモラスだったりシリアスだったりと、ユニークなポーズと表情を見せてくれます。

その中で私がいちばん印象に残ったのは、珊底羅(サンテラ)大将の表情でした。それは悲しさを宿していて、いろんな物を見てきた人のまなざしでした。

そして、十二神将として与えられた使命や運命を淡々と受け入れ、こなしていく、揺るぎない不屈の意志を宿したまなざしでもありました。

現実の人間で、このような表情を見かけることはありません。仏像という超現実的な存在に託したからこそ、実現できる表情なのだと思います。

それが信仰や芸術のなせるわざなのだと思いました。

これほどの作品を残しておきながら、仏師の名前や経歴などは一切伝わっていないそうですが、仏像は芸術作品ではなく、信仰の対象なので、むしろその方が自然なのかもしれませんね。

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もう一度本堂へ

ビデオを観た後、もう一度十二神将を拝むために本堂へ入りました。

そして、ビデオで初めて気づいた点を意識しながら鑑賞していくことにしました。ところが、いかんせん堂内が暗すぎて、よく分かりませんでした。

たとえば、ビデオで因達羅(インダラ)大将の口元には鮮やかな赤の彩色が残っているというので、確かめようとしたのですが、暗すぎて赤色が分かりませんでした。

言われてみれば赤いような気がするというレベルで、これさえも単なる刷り込みの可能性が高いです。

気になる珊底羅大将の表情も間近で拝んだのですが、やはりビデオで観たときの印象とは少し違っていました。暗い上に少し距離があって、見る角度も限定されているので、よく分からないのです。

明るすぎると見え過ぎてかえって興ざめなのは分かるのですが、暗すぎるのも考え物だな、と思いました。

とはいえ、光をあまり当てないからこそ、千数百年の時を経ても、彩色が比較的よく保たれているという側面があります。

また、そもそも仏像は美術館の絵画や彫刻のような見世物ではないので、仏様のお住まいとしては、これが正解なのだと思います。

まとめ

新薬師寺に訪れるのはこれで3回目でした。

十二神将像が目当てなのですが、訪れる度に魅力を新発見します。

今回の収穫はビデオでした。初めて観たときは、復元された伐折羅大将の派手な彩色しか印象に残らなかったのですが、今回観た時はそれ以外の要素にも目が行きました。

暗い堂内で立ち見ではなく、畳の間で座ってくつろいで観ることができたというのも大きいと思います。

それによって十二神将の魅力を新たに見出すことができました。ビデオがガイドの役割を果たしてくれたわけですね。

何も考えずに漠然と観光地や美術館を訪れ、漠然と自然の景色や作品を眺めるのも悪くないですが、やはりガイドがあるとより深く味わうことができます。

ちなみにこのビデオ、2004年制作とのことですが、題材が題材だけにまったく色褪せません。

純粋にドキュメンタリーとしてクオリティが高いです。内容の密度や真摯さ、CGやBGMの演出などから、制作者の本気が伝わってきます。

新薬師寺に訪れたときは、このビデオは必ず観るべきだと思います。なお、非売品ではなく、市販もされています。

↓↓2016~2017年の年末年始の奈良旅行記はこちら↓↓

新薬師寺の国宝十二神将像。会うたびに魅力を新発見できます

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