マンガンは糖脂質代謝や骨の形成、性ホルモンの合成、抗酸化作用等に関わる酵素の活性化に欠かせないミネラルです。

そんなマンガンの働きや多く含む食べ物、欠乏症や過剰症などについて簡単にまとめてみました。

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マンガンとは

マンガンは成人の体内に約12~20mgほど存在しています。ミトコンドリア、肝臓、膵臓、腎臓、網膜、毛髪などに多く分布しています。

食品中のマンガンは胃酸で溶かされ、小腸から吸収されて肝臓へ運ばれます。

消化管からの吸収率は約3~5%ほどと低いですが、体内における必要量が少ないため、欠乏しにくいミネラルです。

体内に吸収されたマンガンの大部分は、胆汁や膵液から腸管に排出され、便として排泄されます。そのため、マンガンの体内量は胆汁の排泄によって調節されています。

なお、マンガンはトランスフェリンなど、鉄と同様のしくみによって全身に輸送されます。

そのため、マンガンと鉄は拮抗し、どちらかの摂取量が増えると、もう片方の吸収率が下がる関係にあります。

鉄分の働き、多く含む食品、不足や過剰の症状、一日摂取量は?

マンガンの働き

マンガンはクエン酸回路(TCA)回路で働くピルビン酸カルボキシラーゼや抗酸化作用を持つスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、必須アミノ酸であるアルギニンの分解酵素であるアルギナーゼなどの酵素の活性化に欠かせないミネラルです。

マンガンは、酵素の構成成分や補酵素として、成長期における骨の発育糖脂質代謝性ホルモンの合成抗酸化作用などに関わっています。

マンガンが欠乏すると、疲れやすい、めまい、運動機能低下、体重減少、性機能の低下、妊娠障害、成長障害、骨の発育不全、インスリンや甲状腺ホルモンの合成不良、骨代謝異常、糖脂質代謝異常、皮膚代謝異常など、さまざまな障害を引き起こします。

なお、マンガン欠乏症の研究は現在のところ不十分ですが、マンガンはもともと必要量が少ない上、植物性食品に幅広く含まれているため、通常の食生活で不足することはほとんどないと考えられています。

ただし、完全静脈栄養施行患者においては欠乏する可能性があり、補給の必要があるミネラルの1つとされています。

マンガンの1日あたりの目安量、耐容上限量

マンガンの1日あたりの目安量

18歳以上のマンガンの1日あたりの目安量および耐容上限量(mg)は、以下のとおりです。

18歳以上の男性 4.0mg 11mg
18歳以上の女性 3.5mg 11mg
(妊婦、授乳婦とも付加量なし、耐容上限量なし)

左が目安量、右が耐容上限量

詳しい表を以下に掲げます。

厚生労働省HPより

マンガンと過剰症、耐容上限量

体内に取り込まれたマンガンの大半は、胆汁から腸管に分泌された後、便として排泄されるため、過剰症のおそれはほぼありません。

ただし、マンガン取り扱い業者などが慢性中毒にかかり、中枢神経の障害をきたす例などが報告されています。

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マンガンを多く含む食品

マンガンは、土壌中に多く含まれるミネラルです。そのため、穀類や野菜、藻類、ナッツ類、豆類など植物性食品に幅広く含まれます。

お茶については、茶葉には多く含まれますが、浸出液にはそれほど含まれません。また、動物性食品にはあまり含まれません。

マンガンを多く含む食品の、可食部100グラムあたりの含有量(mg)は以下のとおりです。

アマランサス 6.14
玄米 2.06

いたや貝 4.90
しじみ 2.78

モロヘイヤ 1.32
あしたば 1.05
干しずいき(乾)25.00

油揚げ 1.55
生揚げ 0.85

ひよこ豆(全粒フライ味付け)2.20

くるみ(炒り)3.44
栗 3.27

煎茶(茶)55.00
煎茶(浸出液)0.31

マンガンの上手な摂り方

マンガンは土壌中に含まれるミネラルで、穀類や野菜、豆類やナッツ類、藻類など植物性食品に幅広く含まれるため、これらの食材を取り入れた、通常の食生活を送っていれば不足することはありません。

マンガンの欠乏症・過剰症まとめ

マンガンが欠乏したり過剰になったりすると、以下のような症状を引き起こします。

マンガンの欠乏症

運動機能低下
体重減少
成長阻害
骨の発育不全
生殖能障害
妊娠障害
低コレステロール血症
血液凝固たんぱく質の異常
インスリンや甲状腺ホルモンの合成不良
糖脂質代謝異常
骨代謝異常
皮膚代謝異常

マンガンの過剰症

慢性中毒による神経障害

マンガンまとめ

マンガンについて、以下に簡潔にまとめます。

マンガンの主な働き

酵素の構成成分、骨の形成促進、糖質・たんぱく質・脂質代謝、皮膚代謝、運動機能の維持、抗酸化作用

マンガンを多く含む食品

マンガンは植物性食品に豊富で、動物性食品にはあまり含まれていません。

穀類(アマランサス、玄米など)
貝類(いたや貝、しじみなど)
野菜(モロヘイヤ、あしたばなど)
大豆製品(油揚げ、生揚げなど)
豆類(ひよこ豆など)
ナッツ類(くるみ、栗など)
茶葉

マンガンの1日あたりの目安量

18歳以上のマンガンの1日あたりの目安量および耐容上限量(mg)

18歳以上の男性 4.0mg 11mg
18歳以上の女性 3.5mg 11mg
(妊婦、授乳婦とも付加量なし、耐容上限量なし)

左が目安量、右が耐容上限量

マンガンを食べ物から上手に摂る方法

マンガンは穀類や野菜類、豆類や藻類など様々な植物性食品に豊富に含まれる。

そのため、これらの食材をきちんと摂っていれば、通常不足することはない。

穀類では玄米やアマランサスに豊富なので、ご飯やパンにこれらを混ぜることで十分な量を摂ることができる。

↓↓各ビタミン・ミネラルの働き、多く含む食べ物や食べ方、欠乏症や過剰症などについて

こちらでビタミン・ミネラルについて、簡単にまとめています。

主要(多量)ミネラル
カルシウムと骨、ビタミンD、エストロゲン
リンと骨、細胞膜、DNA、インスタント食品
マグネシウムと骨、心筋梗塞、生活習慣病
ナトリウムとむくみ、高血圧、カリウム、減塩対策
カリウムと高血圧、脳卒中、ナトリウム、腎臓

微量ミネラル
鉄分とヘム鉄、非ヘム鉄、不足の症状、女性の摂取量
亜鉛と味覚、成長、生殖機能、インスリン
銅と貧血、白髪、抜け毛、鉄や亜鉛との関係
マンガンと骨の成長、糖脂質代謝、性機能
ヨウ素と甲状腺ホルモン、乳幼児の発達
セレンと抗酸化作用、水銀やヒ素やカドミウムの毒性

脂溶性ビタミン
ビタミンAとβカロテン、抗酸化作用
ビタミンDと骨とカルシウム
ビタミンEと過酸化脂質と抗酸化作用
ビタミンKと骨と血液凝固と新生児

水溶性ビタミン
ビタミンB1とアルコール
ビタミンB2と脂質の代謝
ナイアシンとアルコール、トリプトファン
ビタミンB6とアミノ酸、つわり、月経前症候群
葉酸と妊娠、DNA、動脈硬化
ビタミンB12と葉酸の関係、欠乏症、消化吸収の特徴
パントテン酸と糖質・脂質の代謝、神経伝達、善玉コレステロール
ビオチンと卵白、アトピー、血糖値、胎児